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個別課題実験
とは? |
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およそ学習とは、子供にとって自発的な主体性のある行為でなければならないとは、つねに語られ、主張され、試みられてきたことである。裏がえしていうなら、それほどに教育ということは、教師からの一方的な知識注入におちいりやすいし、ことに今日の日本の教育状況の中では、自発的・主体的な学習は困難にされている。
田中実(1978)思想としての科学教育.P141,大月書店.
日本の理科教育において、「実験」というものは、単なる既習内容の確認に終わっていることが多い。しかし、本来「実験」とは、疑問→仮説→実験→、という過程を経るべきものである。
これを指導するには、教師側に大変な負担がかかる。そもそも、教師側がそのような教育を受けてこなかったのだから、簡単に導入できるものではない。また、生物実験では、教材となる生物を飼育・培養する必要がある。これを含め、生物実験には、やった人でないとわからない「コツ」のようなものがある。逆に、それがわかれば、生物の課題実験の導入はそれほど難しいものではない。 |
「課題実験」とは、授業時間の内、かなりまとまった時間をとって、1つの課題について集中的に研究させる方法である。高等学校学習指導要領(理科)では、「探究活動」と「課題研究」という項目が取り上げられ、その重要性が指摘されている。しかし、その実践報告は少なく、これらを実施するにあたっては、多くの検討すべき点があると思われる。
埼玉県の公立高校の生物教諭 半本は、これらの問題点の改善のため、「個別課題実験授業」という授業形態を、高校の「生物」の授業に導入し、実践・研究を進めている。この考えに賛同した、埼玉県の高校生物教員が、「教材生物研究グループ」を設立し、研究を進めてきた。我々の考える「個別課題実験」とは、以下のような特徴を持っている。 |
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教師が提示したいくつかの課題の中から、生徒に自由に課題を選ばせ、実験・観察を通して研究を行わせる。これにより、それぞれの生徒が同時間帯に異なる課題に取り組む、という形態を取る事になる。 |
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これまでの実験では、教師が準備・調製した材料を、生徒は言われるまま取り扱う形態が多かった。これでは、生徒は材料となる生物に興味が湧きにくいし、実験の目的の理解も乏しいものになりやすい。
また、個々の生徒が別々の課題に、同時に取り組む場合、教師がその全てを一度に準備するのは不可能に近いので、準備の段階から生徒に取り組ませるのがよい。 生徒に、必要な器具・薬品等をあらかじめ申し出させ、また、材料の調製や教材生物の培養・飼育もさせる。これは、材料の調製や培養・飼育を通してその教材生物への理解と興味・関心が育成され、それが実験授業への動機づけになることが期待される。とともに、準備、特に培養・飼育自体が研究課題になり得るからである。「実験」に臨む生徒の姿勢としては、その教材生物に対する探究意欲や研究心が旺盛になることが望ましい。この意味から、準備段階から生徒に取り組ませる意義は大きい。
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半本は、異なる課題に取り組む個々の生徒を、1人の教師が指導する困難さを解消するために、個々の課題について「実験マニュアル」を作ることを提唱した。これを受けて、教材生物研究グループでは、生徒自身が読んでその通りにやれば、準備や培養・飼育、さらに、実験が行えるという「実験マニュアル」を、メンバーで分担して作製している。「生徒向け」という点から、興味を引くためにイラストを多用し、文章も工夫して、できるだけ読みやすくした。
文献
半本秀博(1990) 個別課題実験の実践とその検討.生物教育30,143-148.
扱われている教材生物
アメーバ、キイロショウジョウバエ、真性粘菌、シダ前葉体、体細胞分裂、発光細菌、ヒキガエル卵、ヒドラ、ブレファアリスマ、ボルボックス、ミジンコ、その他実験技術 |
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新しいメンバーも加わり、14年ぶりに「課題実験マニュアル」の改訂し、改訂版が出版されました。
今回、さらに新しい教材生物を付け加えました。目次を左に示してあります。ご覧下さい。 |
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